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宝池のほとりで ~平泉幻想曲~(吹奏楽のために)
作曲:山口哲人氏 平泉の寺院や庭園などが造営されたとき、大きな意味を持ったものが「浄土思想」であるのは周知のとおりである。浄土を人々により伝わりやすくするために中国では「浄土変相図」「浄土曼陀羅」などの絵図が描かれたが、日本ではこれをさらに空間的に発展させた「阿弥陀堂」や「浄土庭園」が考え出された。そこでは、阿弥陀仏がいるとされる西方の死後の世界(極楽浄土)を再現しようと、東向きの仏堂の前面に蓮池を配置し、池を挟んで現世と来世を区切った。言い換えると、池は浄土と現世をつなぐ役割を担っているのである。日本における浄土庭園の大きな特徴は、日本の伝統的な考え方である「自然との融合」で、背後の小山を庭園の一部に取り込んだり、自然との調和を目指し曲線で描かれた「宝池」または「円池」と呼ばれる池を配置することである(インド等では方形に造作される)。 昨年の大震災以降、私は作曲家として、創作時にはいつもあの忌まわしい大惨事の悲惨さを忘れることなく表現した、更には被災されたすべての人を癒すべき鎮魂の、また未来への希望を願う曲を書かねば、と心に思ってきた。だが実際に筆を取ると、あの恐ろしい大地の震えや、黒い津波の慈悲なき破壊を正確に描写した、あるいは大切なものを亡くした方々のその悲しみを少しでも慰撫できる楽曲として整理成立させる事は私には到底できなかった。今の自分にできることは、浄土で表現される、また日本人が否応なしに受け入れなければならない自然との共存・対話を直視し、背伸びをせずに自分自身の気持ちを表す曲を、自分が信じる未来を想像し書くことしかない。これを聴かれた全ての方の心を救おうなどという大それたことは考えまい。(私は基本的に無神論者であるが)現世と、宝池を隔てて前方に仰ぎ見ることができる未来の理想郷をイメージしながら作曲した(あえて“和風”な旋律、和声は使用せず、自分にとって身近な語法で作曲した)。 この作品は、岩手大学アートフォーラム主催の平泉国際交流展「アートでつなぐ」からの委嘱で2011年9月に作曲された。 2012年3月 作曲家記す。
by minami_mi_1997
| 2012-05-04 17:00
| 作品の紹介
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